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ストックオプション価値評価の理論とシミュレーション

ストックオプションの価値評価は、その性質から、様々な数学アルゴリズムに基づいて計算されます。ここでは、代表的な価値評価手法の紹介に加えて、その中の一つであるモンテカルロ法を用いた価値評価ツールをWeb内で提供しています。

オプラボは、ブラックショールズモデル・二項モデルによる価値評価ツールに加え、株価条件や業績条件が付された複雑な商品設計に対応可能なモンテカルロ法による価値評価ツールを自社開発しています。

ストックオプション価値評価の理論

ストックオプションとは、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で、自社株式を購入できる権利をいう。現在、株価と報酬体系を連動し業績向上への意欲を高める目的で、役員退職慰労金を廃止して、役員および従業員に対するインセンティブ報酬としてストックオプションを付与する機会が多くなっている。

当該ストックオプションの評価は、将来の特定時点の予想株価と権利行使価格との差額を現在価値に割り引いて計算するものである。株価の予測は、複数の数学モデルが提案されており、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」では、適用可能なストックオプション価値評価手法の例としてブラックショールズモデルおよび二項モデルが明記されている。また複雑な条件が付与されたストックオプションについてはこれらの価値評価手法では対応が難しいため、実務上は、モンテカルロ法などの手法も利用されている。

価値評価手法

 ブラックショールズモデル

原資産価格(S)は幾何ブラウン運動を前提に、株価の確率変動が対数正規分布に従うとして、オプションの評価単価を直接数式によって算定する。権利行使が特定の1日のみ可能なヨーロピアン・オプションの連続時間型モデルである。

実務において、特定の1日のみ権利行使可能なストックオプションは発行されていないため、過去の権利行使の状況に基づいて合理的に想定できる権利行使日(予想残存期間)を設定する必要があることに留意が必要である。

まず、特別な条件が付されていないプレーンバニラのコールオプション価格は以下の数式で示される。

コールオプション価格

\[ C = e^{-δT}SN(d_1) - e^{-rT}KN(d_2) \]
ただし、 \[ d_1 = \frac{ln\frac{S}{K}+(r-δ+\frac{σ^2}{2})T}{σ\sqrt{T}}、d_2=d_1-σ\sqrt{T} \]

原資産価格:S、権利行使価格:K、リスクフリーレート:r、ボラティリティ:σ、配当利回り:δ、期間:T

次に、バリア価格(H)に達する如何でオプションが実行(ノックイン)、または消滅(ノックアウト)するような条件が付されたバリアオプションの数式を示す。原資産価格が変動して、権利行使価格(K)、バリア価格、原資産価格の大小、およびノックアウト・ノックイン、そしてコールオプションまたはプットオプションによって16種類のオプションが考えられる。つまり、➀バリア価格がスポット価格より大きい(Up)、または小さい(Down)、➁ノックアウト、またはノックイン、➂コールオプション、またはプットオプション、➃バリア価格が権利行使価格より大きい、または小さい、の区分によって16種類のオプションとなる(ただし、実現不可能なケースが2種類存在)。

ここでは、➀バリア価格がスポット価格より小さい(Down)、➁ノックアウト、➂コールオプション、➃バリア価格が権利行使価格より小さい、エキゾチックオプションのコールオプション価格の数式を示す。

コールオプション価格(Down、ノックアウト、バリア価格≦権利行使価格)

\[ C = e^{-δT}SN(d_2+σ\sqrt{T}) - e^{-rT}KN(d_2) \] \[ - m((\frac{H^2}{S})e^{-δT}SN(d_3+σ\sqrt{T}) \] \[ - e^{-rT}KN(d_3)) \]
ただし、 \[ d_3 = \frac{ln\frac{H^2}{KS}+(r-δ-\frac{σ^2}{2})T}{σ\sqrt{T}} \]
\[ m = (\frac{H}{S})^{\frac{2(r-δ)}{σ^2}-1} \]

 二項モデル

権利付与日から権利行使期間の満期日までを期間TをN分割した時間間隔T/Nで、将来の株価の上昇または下降の予想を繰り返し、権利行使時における予想原資産価格と権利行使価格の差額とゼロの最大値を上昇確率および下落確率を考慮して現在価値まで割り戻す離散時間型モデルである。

権利行使が特定の1日のみ可能なヨーロピアン・オプションだけでなく、期間内に権利行使が自由にできるアメリカン・オプションにも対応可能であるが一方で、時間間隔の分割数によって数値誤差が生じる点に留意が必要である。

原資産のボラティリティσから見積もられる上昇率および下降率を用いて、行使期間中の原資産価格推移を算定する。

\[ u = e^{σ\sqrt{T/N}}:上昇率、d = e^{-σ\sqrt{T/N}}:下降率 \]

原資産価格S0の場合、次の分割期間T/Nにおける原資産価格は以下の通りとなる。

\[ S_1 = uS_0:上昇した場合 \] \[ S_1 = dS_0:下降した場合 \]

ステップごとに上昇率または下降率を用いた満期における原資産価格Sと権利行使価格Kとの差額とゼロの最大値がコールオプションのペイオフCとなる。

\[ C_T = Max[S_T-K, 0] \]

リスクフリーレートrにおけるリスク中立確率、

\[ P = \frac{e^{r(T/N)}-d}{u-d}:上昇確率 \] \[ Q = 1-P:下降確率 \]

リスク中立確率によってペイオフを確実性等価へ換算、連続複利で割り引くことによってオプション価格を算定する。

\[ C = \frac{PMax[S-K, 0]_u+QMax[S-K, 0]_d}{e^{r(T/N)}} \]

 モンテカルロ法

株価の確率過程はブラックショールズモデルと同様に幾何ブラウン運動を前提に、満期までの期間を分割することによって離散化し、将来の株価を対数正規分布以外にも様々な分布で乱数を用いて予測する。権利行使が特定の1日のみ可能なヨーロピアン・オプションの離散時間型モデルである。

対数正規分布の場合、固定的なドリフト部分に加え、標準正規乱数εと分割期間T/Nの平方根の積によってブラウン運動を表し、原資産価格の次の分割期間の株価は以下のように予測される。

\[ S_1 = S_0e^{(r-δ-\frac{σ^2}{2})T/N+σ\sqrt{T/N} ε} \]

この繰り返しにより満期日における株価と権利行使価格の差額とゼロの最大値をオプションペイオフとして、モンテカルロ・シミュレーションの試行回数nの平均が期待ペイオフとなる。この期待ペイオフを連続複利で現在価値に割り戻し、オプション価格を算定する。

\[ C = e^{-r(T/N)} \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n (Max[S_Ti-K, 0]) \]

なお、当サイトでは、プレーンバニラのオプションについて、モンテカルロ法によりご試算が可能です(オプション評価シミュレーターはPCサイトへ)。